「ChatGPTやBardなどの生成AIが世界を変えている」という話をよく耳にするようになりました。しかし、このAIブームの裏で進行している「電力危機」という新たな問題をご存知でしょうか?
「生成AIの普及で電力需要が急増している」「データセンターの電力消費量が爆発的に増えている」「世界中でエネルギー供給がひっ迫する可能性がある」
こうした状況から、かつては「古い産業」と見なされていたエネルギー関連株が再び脚光を浴びています。
結論からお伝えすると、2025年以降、生成AIの普及による電力需要の急増は、エネルギー関連株(特に化石燃料、原子力、そして電力インフラ企業)に大きな投資機会をもたらす可能性があります。また長期的には再生可能エネルギーとそれを支える技術への投資も魅力的となるでしょう。
Contents
生成AIがもたらす電力需要の爆発的増加
まず、なぜ生成AIが電力需要を急増させるのか、その現状と将来予測について見ていきましょう。
生成AIと電力消費量の関係
生成AIは膨大な計算処理を行うため、従来のコンピューターシステムに比べて格段に多くの電力を消費します。特に大規模言語モデル(LLM)の学習には莫大な電力が必要です。
これは単に「AIの問題」ではなく、私たちの社会インフラ全体に影響を与える重大な課題です。
データセンターの電力消費量:現状と将来予測
国際エネルギー機関(IEA)によると、データセンターの電力消費量は急速に増加しています。
- 2022年:約460TWh(テラワット時)
- 2026年予測:1000TWh以上(2倍以上の増加)
- 2030年予測:世界の電力消費量の5%以上を占める
この急増は、主に生成AIの普及と大規模言語モデルの学習・運用によるものです。従来の予測をはるかに上回るペースで電力需要が拡大していることが明らかになっています。

24時間365日の安定した電力需要
生成AIサービスの特徴として、24時間365日の安定した稼働が求められることがあります。これはエネルギー供給の観点から非常に重要なポイントです。
この「安定性」という要素が、これからのエネルギー投資において非常に重要なファクターとなってきます。
注目すべきエネルギー関連株の種類
ここからは、AIによる電力需要増加を背景に注目されるエネルギー関連株について、種類別に詳しく見ていきましょう。
化石燃料関連株が短期的に見直される理由
脱炭素の流れの中で「古い産業」と見なされがちだった化石燃料関連企業ですが、AIブームにより短期的な再評価が進んでいます。
特に注目すべき点として、生成AIの電力需要が加速度的に増える中で、「脱炭素だけでは間に合わない」という現実的な見方が広がっていることが挙げられます。
2025年の原油価格については高止まりするとの見方が多く、世界的なエネルギー需要の増加が継続する可能性が高いと考えられています。

原子力発電関連株の再評価
原子力発電は、CO2排出量が少なく安定した電力供給が可能なベースロード電源として再評価されています。
日本国内においても、原発再稼働の気運が高まれば、電力会社や原子力関連技術企業の株価にプラスの影響が予想されます。
再生可能エネルギー関連株の長期的成長
持続可能性の観点から、長期的には再生可能エネルギーへのシフトが加速します。
特に注目すべきは、材料を国内で調達できるペロブスカイト太陽電池などの新技術で、エネルギー安全保障の観点からも重要視されています。

電力インフラ関連株の重要性
電力需要の急増に伴い、送電網や蓄電システムなどのインフラ整備が急務となっています。
特に蓄電技術は、不安定な再生可能エネルギーを大規模に導入する上で不可欠な技術であり、今後の成長が期待されます。
2025年以降に注目すべきエネルギー投資戦略
ここからは、2025年以降のエネルギー投資について、具体的な戦略を解説します。
短期的投資戦略(1-2年)
短期的には、生成AIによる即時の電力需要増加に対応する企業に注目します。
原油価格の高止まりが予想される中、石油メジャーなどの大手エネルギー企業は安定した配当と株価上昇の両面で魅力的な投資先となる可能性があります。
インターネットでお得に取引!松井証券
中長期的投資戦略(3-5年以上)
中長期的には、環境配慮型の持続可能なエネルギーソリューションに投資します。
特に国内での調達が可能なペロブスカイト太陽電池などは、地政学的リスクが高まる中でエネルギー安全保障の観点からも重要性が増しています。
分散投資によるリスク管理
エネルギー市場は政治情勢や技術革新に左右されやすいため、分散投資が重要です。
特にエネルギーETFは、個人投資家にとって手軽にエネルギーセクター全体に分散投資できる方法として有効です。

各種エネルギー源の強みと弱み
ここでは、主要なエネルギー源の特徴と、それに関連する投資先について詳しく解説します。
強み
・24時間安定供給が可能
・既存インフラの活用で即応性高い
・エネルギー密度が高い
弱み
・CO2排出による環境負荷
・資源の有限性
・地政学的リスク
主な投資先
・大手石油会社(メジャーズ)
・天然ガス生産・供給企業
・LNG関連インフラ企業
強み
・CO2排出が少ない
・安定したベースロード電源
・燃料コストが比較的安定
弱み
・安全性への懸念
・建設コストと期間の長さ
・廃棄物処理の課題
主な投資先
・原子力発電事業者
・ウラン採掘企業
・原子炉メーカー
・SMR開発企業
強み
・CO2排出が極めて少ない
・燃料コストがほぼゼロ
・技術革新による効率向上
弱み
・出力の不安定性
・天候依存性
・初期投資コストの高さ
主な投資先
・太陽光パネルメーカー
・風力タービン製造企業
・グリーンエネルギー発電事業者
・次世代太陽電池開発企業
強み
・どのエネルギー源にも必要
・送配電網の近代化需要
・AIによる最適化の可能性
弱み
・規制産業の側面
・巨額の設備投資が必要
・技術標準化の課題
主な投資先
・送配電事業者
・蓄電池メーカー
・スマートグリッド技術企業
・電力管理システム開発企業
これらのエネルギー源は、それぞれに強みと弱みがあります。投資家は自身の投資方針や時間軸に合わせて、バランスの取れたポートフォリオを構築することが重要です。
【サクソバンク証券】外国株式口座開設
エネルギー安全保障と国内エネルギー株
近年の地政学的な緊張の高まりを背景に、エネルギー安全保障の重要性が再認識されています。
地政学リスクとエネルギー自給率
ロシアのウクライナ侵攻による天然ガス価格高騰など、エネルギー供給の不安定化は世界経済に大きな影響を与えています。
特に日本のような資源に乏しい国では、エネルギー安全保障は国家安全保障の重要な柱となっています。投資家としては、この視点を持つことでより長期的な投資判断が可能になります。
日本のエネルギー関連株の現状
日本国内のエネルギー関連株は、世界的な電力需要増加と安全保障の観点から見直される可能性があります。
特に原発再稼働については、エネルギー安全保障と脱炭素の両立という観点から政策的な後押しが強まる可能性があり、関連企業の株価にプラスの影響が予想されます。

AI時代のエネルギー投資戦略:専門家の見解
最後に、エネルギー投資の専門家による見解をもとに、投資戦略をまとめます。
バランスの取れたエネルギーポートフォリオ
エネルギー投資の専門家たちは、特定のエネルギー源に偏らない「バランスの取れたポートフォリオ」の構築を推奨しています。
このような多角的なポートフォリオ構築により、エネルギー市場の変動リスクを抑えつつ、AIによる電力需要増加の恩恵を受けることが可能になります。
投資タイミングと市場動向の見極め
エネルギー株は、原油価格や規制環境、地政学的要因など、多くの変数に左右されます。そのため、投資タイミングの見極めが重要です。
特に2025年は、米国大統領選後の政策変更や、世界的なAI需要の加速によるエネルギー市場への影響が顕在化する重要な年になると予想されています。
株初心者から上級者まで、幅広く選ばれているDMM 株(PR)
まとめ:AI時代のエネルギー投資戦略
ここまで、生成AIによる電力需要急増がエネルギー株にもたらす投資機会について解説してきました。最後に、投資戦略のポイントをまとめます。
1. 電力需要の急増:データセンターの電力消費量は2026年までに2倍以上に増加し、2030年には世界の電力消費量の5%超に達する見込み
2. 短期的投資先:
– 安定したベースロード電源を提供する化石燃料・原子力関連企業
– 24時間365日の安定供給が可能な電力会社
– データセンターREITと電力インフラ企業
3. 中長期的投資先:
– 次世代太陽電池(ペロブスカイトなど)開発企業
– 蓄電技術・スマートグリッド関連企業
– 水素・アンモニアなど次世代エネルギー企業
– SMR(小型モジュール炉)など次世代原子力技術
4. 投資戦略:
– エネルギー源の多様化(化石燃料、原子力、再生可能エネルギー)
– 地域的分散(国内外のエネルギー企業にバランスよく投資)
– 時間的分散(定期的な積立投資でリスクを分散)
– エネルギーETFの活用で個別銘柄リスクを低減
5. 注目すべきポイント:
– エネルギー安全保障の重要性の高まり
– 日本の原発再稼働の動向
– 原油価格の高止まり予想
– ペロブスカイト太陽電池などの国産技術の進展
AI革命は私たちの生活を大きく変えつつありますが、その裏では膨大な電力需要という新たな課題を生み出しています。この「電力危機」は、かつて「古い産業」と見なされていたエネルギーセクターに新たな投資機会をもたらしています。
投資家としては、短期的な機会を捉えつつも、長期的な視点でエネルギー転換の流れを見据えたバランスの取れたポートフォリオ構築が重要です。また、エネルギー安全保障という観点も念頭に置きながら、国内外のエネルギー関連企業への投資を検討することをおすすめします。
生成AIによる電力需要の急増は、エネルギー市場に大きな変化をもたらしつつあります。この変化を理解し、適切な投資先を選ぶことで、社会課題の解決に貢献しながら投資リターンを得る機会が広がっていくでしょう。
◆松井証券◆
よくある質問(FAQ)
生成AIモデル(特に大規模言語モデル)は膨大な数の演算処理を行うため、通常のコンピューターシステムよりも桁違いに多くの電力を消費します。例えば、ChatGPTのようなAIモデルの学習フェーズでは、何千台ものGPUを使用し、一般家庭の数千世帯分に相当する電力を消費します。また、学習後の日常的な利用(推論フェーズ)でも継続的に大量の電力を必要とします。生成AIは24時間365日のサービス提供が求められるため、安定した電力供給が不可欠です。
再生可能エネルギー(特に太陽光や風力)は、天候に左右されて出力が変動するという特性があります。一方、AIデータセンターは24時間365日、安定した電力供給を必要とします。現時点では、大規模な蓄電システムなどの技術が十分に普及していないため、再生可能エネルギーだけでは安定供給が難しいという課題があります。そのため、ベースロード電源として安定した出力が可能な化石燃料や原子力発電が、短中期的には重要な役割を果たすと考えられています。長期的には、蓄電技術の発展や送電網の強化により、再生可能エネルギーの比率を高めていくことが期待されています。
ペロブスカイト太陽電池は、ペロブスカイト構造を持つ結晶材料を用いた次世代の太陽電池です。従来のシリコン太陽電池に比べて、低コストで製造でき、軽量で柔軟性があり、理論的には高い変換効率を実現できる可能性があります。特に日本では、国内で材料調達が可能という点からエネルギー安全保障の観点でも注目されています。また、シリコン太陽電池と組み合わせたタンデム型太陽電池により、変換効率の大幅な向上が期待されています。ただし、実用化に向けては耐久性の向上などの課題も残されており、これらの技術課題を解決できる企業への投資機会が生まれています。
エネルギー株への投資には以下のようなリスクがあります:
1. 価格変動リスク:原油・天然ガスなどの価格変動に大きく影響される
2. 規制リスク:環境規制強化など政策変更の影響を受けやすい
3. 地政学的リスク:国際紛争や貿易摩擦による供給途絶リスク
4. 技術革新リスク:新技術の台頭による既存技術の陳腐化
5. 気候変動リスク:特に化石燃料企業は脱炭素化の流れによる長期的リスク
これらのリスクを考慮し、分散投資や定期的なポートフォリオ見直しを行うことが重要です。また、各企業の脱炭素戦略や新技術への投資状況なども確認するとよいでしょう。
はい、初心者でもエネルギー株への投資は可能です。おすすめの始め方としては:
1. エネルギーセクターETFから始める:個別銘柄を選ぶ前に、エネルギーセクター全体に分散投資できるETFから始めるとリスクを抑えられます
2. 大手総合エネルギー企業から検討:財務基盤が安定し、配当利回りも魅力的な大手エネルギー企業は初心者にもおすすめです
3. 少額から定期的に投資:一度に大きな金額を投入せず、定期的に少額ずつ投資する方法(ドルコスト平均法)でリスクを分散できます
4. 複数のエネルギー源に分散:化石燃料、再生可能エネルギー、電力インフラなど、異なる分野に分散投資することでリスクを軽減できます
まずは少額から始めて、エネルギー市場の動向に慣れていくことをおすすめします。ネット証券なら少額から手軽に国内外のエネルギー株に投資することができます。
