「トランプ大統領が導入した『相互関税』って何?ニュースでよく見るけど意味がわからない…」
「一律関税と相互関税の違いは?なぜアメリカはこんな政策を進めているの?」
「この関税政策は世界経済や日本にどんな影響があるの?自分の投資や家計に影響する?」
このような疑問をお持ちではありませんか?
2025年4月、トランプ大統領が「解放の日」と称して発表した新たな関税政策は、世界経済に大きな衝撃を与えています。しかし、「相互関税」や「一律関税」という言葉の意味や、その影響について詳しく理解している方は少ないのではないでしょうか。
この記事では、トランプ政権の関税政策の中核となる「相互関税」と「一律関税」について、その意味、違い、世界経済や私たちの生活への影響を徹底解説します。国際経済や政治に詳しくない方でも理解できるよう、わかりやすく説明していきます。
トランプ政権の関税政策:「一律関税」と「相互関税」の基本
2025年4月2日、トランプ大統領は「解放の日(Liberation Day)」と称したイベントで、大規模な関税政策を発表しました。この政策は大きく分けて「一律関税(Universal Tariff)」と「相互関税(Reciprocal Tariff)」の2つの要素から成り立っています。
一律関税(Universal Tariff)とは?
一律関税とは、その名の通り、すべての国からの輸入品に対して一律に適用される関税のことです。
この一律関税は、すべての国に一律に適用される「ベースライン」として機能します。つまり、アメリカに商品を輸出するすべての国は、最低でも10%の関税を支払うことになります。
相互関税(Reciprocal Tariff)とは?
相互関税は、一律関税に加えて、特定の国からの輸入品に対して追加で課される関税です。トランプ政権は、アメリカとの貿易で「不公平な取引」を行っていると判断した国に対して、個別に設定した関税率を適用します。
「相互関税」という名前は、アメリカの輸出品に対して他国が課している関税や非関税障壁に「相互に」対応するという意味で名付けられましたが、実際には単純な「相互」ではなく、トランプ政権独自の計算方法で決定されています。

なぜ相互関税と呼ばれるのか?その計算方法を解説
「相互関税」という名前から、他国が課している関税と同じ率をアメリカも課すという意味に聞こえますが、実際はそう単純ではありません。トランプ政権は独自の計算方法で各国の関税率を設定しています。
相互関税の計算方法
トランプ大統領によれば、この計算式で出した関税率は、各国がアメリカに対して課している「貨幣的関税、非貨幣的障壁、その他の不正行為」を合わせた率の「約半分」だとしています。つまり、完全な「相互」ではなく、トランプ政権が「より公平」と考える水準に設定されているわけです。
主要国の相互関税率
国・地域 | 相互関税率 |
中国 | 34%(その後125%に引き上げ) |
EU | 20% |
日本 | 24% |
韓国 | 25% |
インド | 26% |
ベトナム | 46% |
オーストラリア | 10%(一律関税のみ) |
※これらの関税率は、4月9日に一時停止された状態です(中国を除く)。90日後に再開される可能性があります。
トランプ関税政策の目的と背景
トランプ政権がこのような大規模な関税政策を導入した背景には、いくつかの明確な目的があります。
貿易赤字の削減
トランプ大統領は、アメリカが何十年も「ぼったくられてきた」と表現し、貿易赤字を削減するために関税という「レバレッジ」を使うことで、貿易相手国に交渉のテーブルにつかせ、より有利な貿易条件を引き出す狙いがあります。
国内製造業の再興
特にトランプ政権は、工業製品の国内生産回帰(リショアリング)を促進し、アメリカの製造業基盤を強化することを目指しています。
交渉カードとしての関税
財務長官のスコット・ベセントは、「これが彼の戦略だった」と述べ、関税政策は交渉のためのレバレッジであることを示唆しています。

関税政策をめぐる最新の展開と変更点
トランプ政権の関税政策は発表以降、いくつかの重要な変更が加えられています。最新の状況を確認しておきましょう。
90日間の一時停止(中国を除く)
4月9日、トランプ大統領は予定通り実施されたばかりの相互関税について、中国を除く全ての国に対して90日間の一時停止を発表しました。この間に各国との貿易交渉を進める方針です。
一方で中国に対しては、「世界市場に示してきた敬意の欠如」を理由に、相互関税率を34%から125%へと大幅に引き上げました。これにより中国からの輸入品は既存の20%と合わせて145%という非常に高い関税率が適用されることになりました。
電子機器の一部品目が除外対象に
除外対象となった電子機器の詳細なリストは公開されていませんが、アメリカ国内で代替生産が難しい品目が対象になったと推測されています。
カナダとメキシコの扱い
カナダとメキシコの状況は複雑ですが、USMCA準拠の製品に関しては0%、非準拠品には25%、エネルギー関連は10%という状況が続いています。

トランプ関税政策の経済的影響
トランプ政権の大規模な関税政策は、アメリカ経済だけでなく世界経済にも大きな影響を与えると予想されています。
アメリカ経済への影響
関税収入は10年間で約5.2兆ドル(約780兆円)と推計されていますが、経済成長の鈍化による税収減少を考慮すると、実質的な増収は4.5兆ドル(約675兆円)程度になると見られています。
タックス・ファウンデーションの分析によれば、トランプ政権の関税政策はアメリカの一般家庭に年間平均約1,300ドル(約19.5万円)の追加負担をもたらすとされています。これは実質的な増税として家計を圧迫する可能性があります。
世界経済への影響
トランプ政権の関税政策は、世界的な貿易戦争を引き起こす可能性があります。多くの国が報復関税を検討または実施しており、世界経済全体に悪影響を及ぼす恐れがあります。
欧州連合(EU)は既に対抗措置を準備しており、中国も報復関税を発表しています。こうした貿易摩擦の拡大は、世界的なサプライチェーンの混乱や物価上昇をもたらす可能性があります。
株式市場への影響
関税政策発表後、アメリカの株式市場は大きく下落しました。S&P500指数は2月の最高値から約7兆ドル(約1,050兆円)の時価総額が失われました。
モルガン・スタンレーのアナリストは「関税の雲が一時的に晴れたが、90日後にどうなるかはまだわからない」と警告しています。

関税政策の是非:賛否両論の議論
トランプ政権の関税政策については、賛否両論があります。主な議論をまとめてみましょう。
賛成派の主張
関税により輸入品の価格が上昇することで、国内製造業が保護され、アメリカ国内の雇用が増加するという主張です。特に鉄鋼・アルミなどの産業では、関税により国内生産が増加する可能性があります。
関税を「レバレッジ」として使うことで、他国とより有利な貿易条件を交渉できるという主張です。実際に多くの国がアメリカとの貿易交渉に応じる姿勢を示しています。
関税により輸入が減少し、貿易赤字が改善されるという主張です。トランプ政権は、貿易赤字の削減が国家安全保障にとって重要だと強調しています。
関税により政府の税収が増加するという点も支持派は強調します。試算では10年間で約5兆ドル(約750兆円)の関税収入が見込まれています。
反対派の主張
関税は輸入品の価格上昇を招き、最終的には消費者がその負担を強いられるという批判があります。タックス・ファウンデーションは、一般家庭に年間約1,300ドル(約19.5万円)の追加負担が生じると試算しています。
多くのエコノミストは、関税政策がアメリカと世界の経済成長を鈍化させ、最悪の場合は景気後退を引き起こす可能性があると警告しています。ペンシルベニア大学は、GDPが長期的に約6%減少すると予測しています。
他国が報復関税を課すことで、貿易戦争が拡大し、アメリカの輸出産業にも悪影響が及ぶという懸念があります。特に農業部門は報復関税の標的になりやすく、大きな打撃を受ける可能性があります。
世界的なサプライチェーンが複雑に絡み合った現代経済において、関税による混乱は予想以上に大きくなる可能性があります。製造業は部品調達の困難や価格上昇に直面する恐れがあります。
トランプ政権の関税政策の評価は、経済学者や政治的立場によって大きく分かれており、その効果については今後の展開を注視する必要があります。
個人投資家や消費者への影響と対策
最後に、トランプ政権の関税政策が個人投資家や一般消費者にどのような影響を与えるか、またその対策について考えてみましょう。
消費者への影響
小売大手のターゲットやウォルマートなどは、サプライチェーンの見直しを進めていますが、短期的には消費者が価格上昇の影響を受けることは避けられないでしょう。
財務長官のスコット・ベセントは「価格は上昇しない」と主張していますが、多くのエコノミストは関税コストの大部分が最終的に消費者に転嫁されると予測しています。実際、アマゾンの販売者の中には、既に数百の商品の価格を引き上げているとの報告もあります。
投資家への影響
関税政策の展開によって株式市場のボラティリティが高まることが予想されます。特に中国からの輸入に依存している企業や、輸出産業は大きな影響を受ける可能性があります。一方で、国内製造業や鉄鋼・アルミ産業などは恩恵を受ける可能性もあります。投資家としては、ポートフォリオの分散や、関税の影響を受けにくいセクターへの投資検討が重要です。
また、貿易摩擦が長期化した場合、景気後退リスクも高まるため、防衛的な資産配分(債券や金など)の比率を高めることも一つの戦略です。
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消費者・投資家としての対策
今後予想される価格上昇に備えて、家計の見直しや節約計画を立てることが重要です。特に高額な輸入品の購入は、価格動向を注視しながら検討すると良いでしょう。また、国産品や関税の影響を受けにくい製品への切り替えも一つの選択肢です。
ポートフォリオの分散化と、貿易摩擦の影響を受けにくいセクターへの投資検討が重要です。国内需要型の企業や、関税から恩恵を受ける可能性のある企業(国内製造業など)にも目を向けると良いでしょう。また、市場のボラティリティに備えて、リスク許容度の再評価も検討すべきです。
関税政策は日々変化しています。90日間の一時停止後にどうなるか、また中国との貿易摩擦がどう展開するかを注視することが重要です。信頼できる情報源から最新情報を入手し、状況に応じて柔軟に対応することが求められます。
トランプ政権の関税政策は、まだ始まったばかりであり、今後の展開によって影響度は大きく変わる可能性があります。消費者・投資家としては、最新の動向を注視しながら、自身の経済状況に合わせた適切な対策を講じることが重要です。

まとめ:関税政策の行方と私たちへの影響
トランプ政権の一律関税と相互関税は、保護主義的な貿易政策の象徴として世界経済に大きな衝撃を与えています。
トランプ政権は関税を「レバレッジ」として使用し、各国とより有利な貿易条件を交渉することを目指していますが、その成果と世界経済への影響については、今後の展開を注視する必要があります。
この記事が、複雑な関税政策の理解と、その影響への備えに役立つことを願っています。最新の動向については、信頼できる情報源からの情報収集を継続することをおすすめします。
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よくある質問(FAQ)
一律関税(Universal Tariff)は、全ての国からの輸入品に一律10%の関税を課すものです。一方、相互関税(Reciprocal Tariff)は、国ごとに異なる税率を適用するもので、アメリカとの貿易赤字の大きさや、各国が課している関税・非関税障壁などを考慮して個別に設定されています。一律関税が基本のベースラインであり、相互関税はそれに上乗せされる形です。
日本に対する相互関税率は24%と発表されています。これに一律関税10%が加わるわけではなく、一律関税の代わりに24%の関税が適用される予定でした。ただし、現在は中国を除く国々に対する相互関税が90日間一時停止されており、この間は日本に対しても一律関税10%のみが適用されています。90日後にどうなるかは、両国間の交渉次第です。
関税の影響が消費者価格に現れるまでには、ある程度の時間がかかる可能性があります。多くの小売業者は在庫を抱えており、すぐには価格転嫁しないかもしれません。また、サプライチェーンの見直しや、関税の対象外の国への生産シフトなどの対応も予想されます。ただし、中長期的には、コスト増加分が消費者価格に反映される可能性が高いとされています。特に中国からの輸入依存度が高い製品カテゴリーでは、価格上昇が顕著になる可能性があります。
90日間の一時停止期間中に、アメリカは各国と貿易交渉を進める方針です。交渉の結果によっては、一部の国に対する関税率が調整されたり、さらに一時停止が延長されたりする可能性もあります。トランプ大統領は既に「2〜3週間以内」に新たな関税率を発表する可能性に言及しており、状況は流動的です。貿易交渉の進展状況によって、今後の展開が大きく変わる可能性があります。
関税政策の影響を考慮した投資戦略としては、以下のポイントが重要です:
1. ポートフォリオの分散化:地域やセクターを分散させることで、リスクを軽減
2. 関税の恩恵を受ける可能性のある産業への注目:国内製造業や鉄鋼・アルミ産業など
3. 関税の悪影響を受ける産業への警戒:中国からの輸入依存度が高い小売業や、輸出依存度の高い産業など
4. 景気後退リスクへの備え:防衛的な資産(債券、金など)の比率を適切に調整
5. 為替リスクの考慮:ドル高・ドル安の動向に応じたポジション調整
ただし、市場は既に関税政策の一部を織り込んでいる可能性があり、個々の投資判断は自己責任で慎重に行うことが重要です。